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今日の情報通信ネットワークはデジタル化、広帯域化、融合化の流れの上にある。本稿では、こうした流れに沿いつつ、米国の通信政策にもふれながら国内の情報通信の動向を整理していくことにする。

 

(2) アナログからデジタルヘ

電話網は、人の声を伝えるためにつくられたネットワークである。音声はアナログ信号であるため、ネットワークもアナログ信号用にできている。ところが、アナログ信号は雑音の影響を受けやすく、伝送路が長くなるほど、また増幅器の数が多くなるほど信号の品質が劣化する。一方、デジタル信号は1か0かのパルス信号によるため、信号の修復が容易で安定した品質を維持しやすい。また、波形を意識する必要がないため多重化しやすいという特長もある。このような特長を持つデジタル信号がすぐにアナログ信号にとって変わらなかったのは、音声がもともとアナログ信号であることの他に、画像など大容量の情報を効率的に送るための圧縮技術の確立や、ネットワーク部品の小型化によるコストダウンを待たねばならなかったからである。これらの条件整備が満たされると同時に、情報通信分野では急速にデジタル化が進行している。

電話のネットワークでデジタル信号を送る必要が生じたのは、コンピュータの登場以降である。1940年代半ばに米国で生まれたコンピュータは、弾道計算などの文字どおり戦略を目的としたものであったが、次第に企業にも導入されるようになり、電話回線とつないでデータを集めたり、リアルタイムな結果を知りたいという要望が生まれてきた。米国の航空会社では1955年には既に24時間無人のオンライン座席予約システムが稼働していたが、日本では電電公社が電話線によるデータ伝送を認めていなかった。1964年、東京オリンピックの競技記録のオンライン速報の成功が電話回線によるデータ伝送の道を開き、国鉄のみどりの窓口での座席予約や銀行のオンライン・バンキングが始まった。その後も電話回線へのコンピュータ接続の制限撤廃が強く求められ、昭和46年から48年にかけて行われた第一次回線開放の3年後には、自営のオンラインシステムは1,429にも達した。

 

(3) ISDN(Integrated Services Digital Network)

このように、コンピュータの登場の初期の段階から、データをより速く、より広く利用するためにコンピュータと電話線をつないで使いたいというニーズは高く、電話網を

 

 

 

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